近年、診療報酬改定のトレンドは「医師・看護師の負担軽減」ともうひとつは「入退院支援」です。
令和2年度の診療報酬改定では地域包括ケア病棟の施設基準として入退院支援部門の設置が義務付けられました。
入退院支援部門は国にとって、病院にとって、そして患者さんにとってどんな魅力があるのでしょうか。
入退院支援部門が行う業務、それはPFM(Patient Flow Management)
病院関係者ならもはや常識!PFMってなに?
PFMとはそのまま読めば「患者の動きの管理」ということになります。
狭い意味では患者さんの入退院に関する管理を行うということになりますが、近年では非常に広範囲に患者さんの把握を行うことが推奨されています。
実際の業務内容を入院前と入院後に分けて例を挙げて説明していきましょう。
【入院前】
①患者の身体的社会的状況を把握する
②利用している介護サービス等の把握
③入院中に褥瘡が発生するリスクがないか確認
④栄養状態の確認
⑤服薬している薬剤の把握、採用薬に無ければ代わりになる薬剤の検討
⑥退院困難となり得る要因の把握
⑦入院で行われる治療や検査の説明
⑧入院中の生活の説明
【入院後から退院まで】
⑨退院までの支援計画の説明
⑩病棟での退院カンファレンスを行う
⑪必要に応じて転院や施設入所のお手伝い
⑫病院全体のベッドコントロール
ざっと思いつくものだけでもこれだけあります。
多くの病院で採用され始めた入退院支援部門
入院前の患者からの聞き取り業務と、入院後の退院に向けた支援を行う業務は別々の部門で行うのが一般的です。
ひと昔前であれば入院してからゆっくりと進めていたこれらの業務を、入院前から効率的に行うことが求められるようになったのです。
国からすれば入院期間が短くなり医療費の抑制に、病院からすれば業務分担を行うことでスタッフの負担軽減に繋がるうえ、診療報酬上で優遇されているため、入退院支援部門を設置する病院は非常に多くなりました。
病棟看護師の負担軽減、患者さんの満足度向上にも役立つ入退院支援
近年では病棟の看護師が患者さんのケアに集中できるように、その周辺の環境を整えるのが一般的となってきました。
その背景には、病棟看護師の業務内容が診療報酬改定を繰り返す度に非常に多岐に渡るようになってしまったことがあります。
そんな中、入院時の患者さんからの聞き取りと退院に関する様々な調整を他部署におまかせできるということで、(少なくとも私の病院では)病棟看護師からは非常に喜ばれています。
患者さんやそのご家族からは、治療内容や検査の方法、入院生活などを入院前にしっかりと説明を受けることができるので安心できるとのお声を頂きます。
以前は外来で説明を行っていましたが、外来は周囲もせわしなく、説明する看護師さんも忙しいので患者さんから質問をしにくい環境だったと思います。
入退院支援部門という別窓口で十分な時間を確保した上で説明できるので、治療に関する患者さんの理解度もまったく違ってきます。
また、外来には一人で来る患者さんも多く、入院が決まった日に全ての説明を一人で受けるよりも、別の日に家族と来院して一緒に説明を受けるほうが安心です。
令和2年度の診療報酬改定ではしっかりとした人員配置を行う入退院支援部門はさらに高い点数の入退院支援加算を算定できるようになりました。
つまりは入退院支援部門が医療の質の向上やスムーズな退院を促すことで入院医療費の抑制に繋がっているとの判断がされたのでしょう。
入退院支援部門は病院の経営上でも重要な位置へ
入退院支援部門にベッドコントロールの機能も持たせて病院全体の入退院患者を把握させる病院が多いと思います。
このベッドコントロールの中央化を行うことで、各病棟の管理者の負担軽減に繋がり、さらに病院全体の病床稼働率を上げることができます。
とは言え、患者さんを入院させるベッドを決める際には様々な思惑があり、病棟間スタッフ間でトラブルが発生することもしばしばです。
うちの病院だけなのかしら?
ですので入退院支援部門の実務責任者は色んな部署から文句を言われても動じない、強い意志と鬼のメンタルを持ったスーパー看護師みたいな人じゃないとダメです!
ここが弱いと病院全体の病床稼働に影響が出て収益に大きく影響するためです。
今後も多くの病院で入退院支援部門は強化されていくと思います。
自分の病院の入退院支援部門はしっかりと機能しているのかどうか、チェックしていくと良いでしょう。